TROUBLEMAKER 39 - 40 39 うれしはずかし里帰り 特急列車内は適温に保たれていた。 平日のせいか、乗客は皆静かで、ぼんやりと窓外を流れる景色を眺めていると、瞼が重くなってくる。 継生の隣に座る梢は、列車が走り出した直後こそ、窓の景色を見て、あれこれ喋っていたが、しばらくすると飽きたようで、鞄から出した文庫本を読み出した。そして、それきり話しかけてこないから、いやが上にも眠気は高まり、彼はいつの間にか目を瞑っていた。 そんなのありえませんよと、ぎゃあぎゃあ喚くアシスタントたち(主に相原)を宥めすかして、どうにか原稿をいつもより早く仕上げたのが、つい五時間程前である。睡魔が襲ってくるのも無理はなかった。 「あとどれくらいで着くのかなぁ」 本格的に眠りかけた頃に、梢が話しかけてきた。ひどいタイミングだ。 質問を無視して目を瞑ったままでいると、彼女は諦めずに肩を揺すってきた。 「ねえ、どこで降りるんだっけ?」 「……」 「継生ちゃーん」 と、梢が継生の袖を引いたとき、車内アナウンスが流れた。 告げられた駅名を耳にした途端、彼は一気に目が覚めた。 「ここで降りるんじゃないか」 「え、そうなの?」 「そうだよ!」 継生は、まごついている梢を通路へ追いやりつつ、頭上の棚から荷物を引っ張り出し、急いでドアの前まで走った。 しかし、列車はまだ駅に着いていなかった。寝惚けて、勘違いしてしまったようだ。 「な、なんだ、まだ……」 「なにをそんなに焦ってんのよ」 意味も無く急かされた梢は、むっとした顔になっている。継生は決まりが悪くなり、同じような仏頂面を作った。 「もう停車したのかと思ったんだ」 「駅に止まったら、私だってさすがに気が付きます」 「……」 反論のしようがなく、継生は黙った。 慌てて席を立った手前、今更戻るのも恥ずかしいので、駅に到着するまで、二人はその場で立って待つはめになってしまった。 「まあ、なんて田舎」 駅に降り立つや否や、梢は周りをきょろきょろと見回し、そう口にした。冗談半分で言っているのだと分かっていても、継生は憮然とした。 実際のところ、ここはまだ市街地である。駅前にはバスターミナルがあるし、飲食店もあれば、町行く若者の姿だって普通に見かける。 これで田舎と言われたら、更に山奥にある実家を、何と呼べばいいのか。 確かに東京に比べれば、駅舎は粗末なものだし、がらんとしたホームからは空や周囲の山並みがよく見えるのだが。 「でも、空気は澄んでるだろ」 継生は控えめに故郷を称えた。 「それに空の色も違うね」 先に改札へと歩き出していた梢が、そう付け足した。 駅舎の外に出ると、懐かしい町並みが目前に広がった。地方の過疎化が叫ばれる昨今だが、継生が家を出た頃と、さほど変化はなく、まだそれなりに商業地として機能しているようだった。 「バス、すぐ来るかなー」 停留所へと歩きながら、梢は首に巻いたマフラーを口元まで引き上げた。 これから一時間弱バスに乗らなければならない。 (それにしても、すごい田舎ではある……) 継生は改めて思った。都会の暮らしに慣れてしまうと、駅からバスで一時間かかる町など、ほぼ秘境に近い。 「あ、そんなに待たなくてもいいみたい」 時刻表と携帯電話の時計を照らし合わせて、梢は安堵したように笑った。午後の白く柔らかな光が、彼女の頬に淡い影を落としていた。 もう、冬なのである。 梢の言った通り、十分ほど経ったところで、目的地へ向かうバスがロータリーに乗り入れてきた。 その停留所から乗った客は、彼ら以外には三人しかいなかった。出で立ちから察するに、皆、地元の人間のようだった。 バスはしばらく市街地の平坦な道路を走り、段々と山の中へ入っていく。 「考えてみたら、こうやって継生ちゃんと二人で遠出するの初めてだよね」 窓に顔を向けたままで、梢が言った。 「そう言えば、そうだな」 と、継生は、さも言われて初めて気がついたような顔をしたが、本当のところは、ずっとそればかり気にしていた。 惚れた女との二人旅。 そう書くと、なんだか演歌の世界のようで滑稽だが、継生からしてみれば、とても笑える状況ではなかった。 梢と一緒に電車に乗ったり、バスに乗ったり楽しいな♪ などという気持ちも、あるにはあるが、傍から見たら、俺たちなんて昼間からぶらぶらしてる変なオッサンと少女の妙な組み合わせにしか見えないだろうな、という侘しい気持ちの方が大きい。 彼女に関しては、何故か自信が無くなるのである。 「どんどん山奥に入っていくねぇ」 梢が呟いた。バスは、鬱蒼とした木々の隙間を縫うように走っている。 「何か怖くなってくるよな」 「変なの。自分の生まれた場所でしょ」 「つっても、もう何年も帰ってないし」 ふうん、と相槌を打つと、梢は窓から顔を離して継生を振り返った。 「でも、どんなとこかなー。継生ちゃんの育った町って」 「つまらねぇところだよ」 「嘘ばっか」 と、梢は小さな声で笑った。こちらのことを全て見透かしているような笑い方だ。 継生は居心地が悪いんだか良いんだか、妙な気分になった。 「あんた、もしかして庄屋のとこのお孫さんかね」 不意にどこからか発せられた声に、継生はどきりとした。 車内に目を走らせると、二席離れた、斜め前方の席に座る客が、こちらに顔を向けていた。還暦をとうに過ぎているような、年嵩のいった男である。 「そうですが」 返事をしながら、継生は誰だろうと思ったが、すぐに実家の近所の住人だということに気が付き、頭を下げた。 「ご無沙汰してます」 老人は皺だらけの顔を綻ばせた。 「随分と大きくなったもんだ」 「はあ、それはどうも……」 三十路手前の男に対して、大きくなったも無いだろうと、継生が困惑していると、老人は梢の方を見て、ほうと大きく頷いた。 「今日は夫婦で里帰りかい」 「へっ……あ、その」 思いがけないことを言われて、継生がしどろもどろになっているのをいいことに、老人は更にからかうような調子で言った。 「随分と若い奥さんじゃないか。どうやって、誑かしたんだ」 「いや、そんなんじゃないんですよ」 物騒なことを言うジジイだなと、継生が焦っているのに、梢は何故か何も言い返さないで、ただ笑っている。 老人は、ふと眩しそうに目を細めた。 「こんなに可愛い子さ連れて帰ったら、墓ん中のじいさんもきっと喜ぶだろう」 祖父の話となると、継生も神妙な気持ちになり、思わず頷いた。 それからしばらく山道を登ったり下ったりして、やがて目的の停留所に着いた。 バスから降りても、しばらくは歩かなければならない。 山間に開かれた集落には、人影がほとんど見えなかった。 「なんで、さっきは黙ってたんだ」 歩きながら継生が聞くと、梢はきょとんとした顔になった。 「なによ、さっきって」 「バスん中で、じいさんに話しかけられたときだよ」 「ああ!」 彼女は笑った。 「私たちのことを新婚さんと思ってた人か」 「お前が否定しないから、あの人、勘違いしたままだぜ」 「別にいいんじゃない」 「いいのか」 梢は全く気にしていないようだ。継生は少し落胆した。こちらは意識しまくっていたというのに。 (……いい年をした大人が、こんな子供に振り回されるなんて) 忸怩たる思いというのは、こういうことをいうのだ。 「それよりもさぁ」 と、梢が顔を曇らせた。新婚カップルと間違えられたことよりも気になることがあるというのか。面白くない。 「私、緊張してきた」 「なにが」 「継生ちゃんの家族に会うのが」 「別に、お前がどんな無礼を働こうが、俺は一向に構わないぞ」 「また、そういうこと言う!」 「だって、本当にそう思ってるもーん」 間延びした声で返すと、梢は目を吊り上げた。 「じゃあ、私がいきなりちゃぶ台引っ繰り返したりしてもいいわけ?」 「いいぜ」 「しないわよ」 「なら、俺がしようかね。今までの恨みを込めて」 「しないわよ」 先ほどと同じ言葉を梢が繰り返したとき、二人の横をトラックが走り抜けていった。彼らは揃って、撒き散らされた排気ガスを手で払う仕草をした。 「鳩のマークの……」 そこまで言いかけて、梢は首を傾げた。 「なんだっけ?」 40 重大発表 あの家だと継生が指差した先を見て、梢は目を見開いた。 瓦葺の屋根しか見えないが、非常に大きな家のようだ。いや、家というよりは、屋敷と呼ぶ方が似つかわしい。 数十メートルに渡って、ぐるりと巡らされた白い板塀から察するに、相当広い敷地を持っているようだ。 梢は隣を歩く継生を思わず見上げた。 この方は実は、いいとこのお坊ちゃまだったのである。 「知らなかった。継生ちゃんの家が、こんなにすごい家だったなんて」 「田舎だから、土地が余ってるんだよ」 さらりと言えるところが、また金持ちらしく思え、梢は少し気後れがした。 「でも他の家は、こんなに大きくないよ」 都会に比べれば、地方の家は大体広いものだが、それにしても、この家は立派過ぎた。 「いくら家が立派でも、大切なのは住んでる人間の質だろ」 「なるほど」 「……なんで、そこで俺を見る」 嫌味なほどに長い塀に沿って歩いていくと、当然だが、やがて端に辿り着いた。曲がると、木でできた立派な門があり、その前にトラックが一台止まっていた。 荷台の扉が開いたままになっている。 「これは……」 トラックを見やった継生は、難しそうな顔をしたかと思うと、少し慌てた様子で門をくぐった。 「どうしたの?」 不思議に思う梢を顧みることもなく、彼はすたすたと進んでいってしまう。コンパスの長さが違う上に早足なので、二人の間には、あっという間に距離が開いた。 やれやれと思いながら、梢はその後を追った。 門をくぐる際に、横目で何気なくトラックの荷台を見てみると、ダンボールの箱が幾つも積まれていた。 まるで引越しでもするみたいだ。そう考えて、車体をよく見てみれば、やはり引越し業者のトラックである。 梢の脳裏に疑問符がいくつも浮かんだ。 この家は、今から引越しでもするというのか。 そう考えると、なるほど継生が慌てた理由もよく分かる。 「ん、いけないわ」 のんびり考え込んでいる場合ではない。梢は鞄を肩に掛けなおすと、改めて門の中へと足を踏み出した。 「……」 梢は辺りを見回した。塀の内には、自分が想像していたものとは些か違う景色が広がっていた。 松の木が植わった庭は広く、池や築山が作られ、日本庭園としての素材が揃っている。 しかし、全く手入れがされていないようだ。 松は枯れ、池にも水は無い。雑草が我が物顔で地面から伸び、玄関まで続く敷石はひび割れている。 奥に見える屋敷が年代物の日本家屋だけに、妙に凄みのある荒み方だった。 梢の憂鬱はいやが上にも増した。 成瀬という家の有り様がよく分かったからだ。 とにもかくにも、がたがたの敷石を歩いて、梢は玄関まで辿り着いた。 継生は家の中に入らず待っていた。早足で歩いていったくせに、結局は気を遣ってくれるのである。 「ぐずぐずするなよ」 「庭が荒れてますね」 「手入れしてた爺さんが死んじまったからな」 どこか捨て鉢な口調で言うと、継生は戸をがらりと開けて、ただいまの一言も言わずに、ずかずかと中へ上がった。我が物顔で廊下を進んでいく彼の後に続いて、梢も靴を脱ぎ、上がり框に足を踏み出した。 「お邪魔しま……す」 梢は挨拶をしたが、どうにも家の中が暗く静かなので、語尾はほとんど消えたようになってしまった。 中の空気は冷たく、樟脳の匂いが微かにしている。廊下の端にはダンボール箱や本が山のように積まれていた。 「誰よ?」 不意に傍の襖が開き、一人の女性が顔を覗かせた。黒目勝ちの大きな目が気の強そうな光を放っている。 彼女は継生を見ると、黒いガラス玉のような瞳を大きく見開き、あらあらまあまあびっくりしたこと! と言った。早回しのテープでも聞かされている気分になる、せわしない声だった。 継生は女性に向けて小さく会釈すると、梢を振り返った。 「姉の冬子だ」 「は、はじめまして。町田梢です」 梢が慌てて頭を下げると、冬子は真顔で、 「梢ちゃんと私は、会うのは初めてじゃないわよ」 「そうですか?」 「以前に写真でお会いしたことがあるわ」 「は、写真で……」 それは「お会いした」内に入らないのではないかと、梢は困惑しつつ、冬子が冗談を言っているのだろうかと思ったが、どうやら彼女は真面目な様子なので、ますます戸惑った。 「そういえば」 と、冬子は継生を見やった。 「お母さんが、継生くんが帰ってくるかもって言ってたわね」 「親父が入院したんだろ」 継生が言うと、冬子は怪訝そうな顔をした。 「なに言ってるの、お父さん入院なんてしてないわよ」 「……は?」 継生は呆気に取られたように口をぽかんと開けて、冬子の顔を見返した。 「でも、お袋から手紙が……」 そこまで言いかけたところで、不意に彼の表情が凍りついた。まるで幽霊にでも会ったような顔をして、廊下の先を見つめている。 その視線を追って梢もそちらを見やった。すると継生の動揺の理由が分かった。 廊下の奥の暗がりから、和服を着た一人の女性が歩いてくる。黒髪を綺麗に結い上げたその姿はまるで粋筋の人間のようだった。 梢の目はしばしの間、彼女の顔の上に留まった。その整った造作に見覚えがあったからだ。 「お母さん」 と冬子が言った。ということは、やはりこの女性は継生たちの母親の響子なのである。 響子は冬子に向けて微かに頷き、継生をちらりと見やったあとで、梢に目を向けた。すると長い睫毛に縁取られた目が、はっとしたように開かれた。 「あなた、東京の梢ちゃんね」 「はい。あの……はじめまして」 梢はいくらかぎくしゃくした動きで頭を下げた。下を向きながら、次は何を言えばいいのだろうと焦りを感じた。 継生さんにお世話になっています? どれだけ感謝してもしきれない……とか? ここに来るまでに予行演習してきたはずの挨拶が、どうにも上手く話せそうにない。 「親父は?」 いいタイミングで継生が口を出してきた。腕組みをした彼は不機嫌丸出しの顔で、響子を睨んでいる。 「とても元気よ」 と、響子は唇の端を引き上げた。傲慢と紙一重の不敵な表情が、継生とよく似ている。 継生の目元が神経質そうに引き攣った。 「どういうことだ」 「ごめんなさいね、騙したりして」 「……なにが、ごめんなさいだ! え!? あんた一体何がしたいんだ!」 今にも頭から湯気が出そうな勢いで、継生は怒鳴り散らした。 「親父が病気だっていうから、わざわざ帰ってきてやったんだぜ」 「だって、それくらい言わないと、あなた帰ってこないじゃないの」 「それなら、少しは帰ってきたくなるような親になったらどうなんだ?」 「相変わらず、可愛くない息子ねぇ」 「あんたの言う可愛い息子ってのは、きっと一切口を聞かない奴なんだろうよ」 段々と継生の声のトーンが下がってきたが、それは単に怒りを内に溜め込んでいるに過ぎないということを、梢は知っていた。 継生とは反対に、響子は至って涼しい顔をしている。 「あなたをここに呼んだのには、ちゃんとした理由があるのよ」 「じゃあ、さっさと話せよ」 継生がせかすと、響子は一呼吸おいてから口を開いた。 「私とお父さん、離婚することにしたの」 「……あっそう!」 と継生は驚いた風もなく言った。梢はぎょっとして彼を見上げた。両親の離婚を、「あっそう」の一言で片付けられるというのか。 響子は不満げな表情をした。 「あなた、少しは驚いたらどうなの」 「あんたらが、まだ夫婦だったことの方が驚きだ」 面白くもなさそうな顔で、継生は言った。 「そんなくだらないことで、俺を呼び戻したのかよ」 「まあ、お待ちなさいな。確かに私たちの離婚は、今のあなたには関係ないことかもしれない。でも、この家が売られることになっても、関係ないって言えるかしらね」 継生は目を見開いた。 「売るつもりなのか?」 「それが、もう売っちゃったのよ、お母さんってば」 と、冬子が深いため息をついた。 「な……」 なんてこったと、継生の呟く声が梢の耳に届いた。 響子は不思議そうに片眉を上げた。 「あーら、そんなに落ち込むことないじゃない。こんな田舎の家、あなたたちだって、いつまでも住みたくないでしょ?」 「……」 継生は苦虫を噛み潰したような顔で黙りこんだ。これまで十年以上も帰省しなかった彼だから、言い返せないのだろう。 「あと一週間もしたら、明け渡さなきゃいけないのよ。だから、継生くんも残してある物、整理してちょうだいね」 響子は晴れやかな声で言うと、梢に向けて嫣然と微笑んだ。 「ちょっとごたごたしてるけど、ゆっくりしていってね」 梢はまるで蛇に睨まれた蛙のような気持ちになり、失礼ではあったが、ただ無言で頷いた。梢の態度に気を悪くした風もなく笑みを深めると、響子はどこかへ出かけるのか、玄関の方へと歩いて行ってしまった。 母親の気配が消えると、継生と冬子の姉弟は安堵と呆れが入り混じったようなため息をついた。 「お袋のヤツ、どうして急に売る気になったんだ」 「これよ」 と、冬子は小指を立てた。「間違えた、こっちだったわ」小指を引っ込めて親指を立てた。 「なんだ、また男か」 うんざりしたように継生は言った。 「いい年して、飽きもせずによくやるよ」 「でも今度こそは本気みたいよ。その彼氏と結婚するって言ってるの。この家を売ったお金でいい暮らしするつもりらしいね」 冬子の言葉に、継生はフンと鼻を鳴らした。 「ご自由にどうぞ、だ」 「それにしても、梢ちゃんも良くないときに来ちゃったわね。いつもならもう少しこの家も綺麗なんだけど」 冬子が気の毒そうな顔で梢を見た。梢は恐縮して首を振った。 「いえ、お構いなく」 そう言いながら、梢は何となく拍子抜けした気分になった。継生の家族に一度きちんと挨拶しなければと気負いこんで来たが、彼らはそれどころではないようだ。 内心恐れていた響子にも軽くあしらわれてしまったし。 「つうか、あのオバサンどこ行ったんだよ」 継生は玄関に向かって顎をしゃくった。冬子は眉をひそめた。 「お母さんね。表に引っ越し屋さんのトラックが止まってたでしょ。あれで一緒に新居に行ったのよ。今日は、また戻ってくるみたいだけど。それに、私も駅前のアパートを借りることにしたの」 「ふーん、そう……」 冬子が話している間、何を考えているのか、継生は黙って天井を見上げていた。 ← → novel |